http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/news/20040427k0000m040143000c.html
咽頭がん格差:
薬の選択で2倍以上 組み合わせ45通り
 のどの周辺にできる「咽頭(いんとう)がん」について、使われる抗がん剤の組み合わせが45種類もあるなど治療方針が病院によってばらばらで、方針次第で3年生存率に2倍以上の差がつくことが、厚生労働省の研究班の調査で分かった。結果をまとめた報告書は98年と00年に発表されたが、その後も治療方針は統一されていないという。

 研究班(班長=斉川雅久・国立がんセンター東病院頭頚(とうけい)科医長)は、全国のがんセンターや大学病院など主要な15病院について、咽頭の一部にできた「上咽頭がん」で85〜95年に最初の治療を受けた患者396人のデータを調べた。その結果、病院によって患者の3年生存率は約30%から約65%まで差があった。

 上咽頭がんは手術しても再発しやすいため、調査では患者の97%が放射線や、数種類の抗がん剤で治療されていた。しかし使われていた抗がん剤の組み合わせは、15病院で計45種類に及び、放射線だけで治療する病院もあった。世界的に標準とされる抗がん剤の組み合わせ(シスプラチンと5FU)とそれ以外では、死亡率が約1.7倍違うことも分かった。

 これとは別に、手術が治療の主な中心になる「下咽頭がん」について、各地のがんセンターや大学病院など12病院から、85〜94年に最初の治療を受けた患者893人のデータを分析した。こちらも3年生存率は病院によって約30%から60%以上まで差があった。

 対症療法にとどまり、がんを取り切る手術(根治手術)など根本的な治療を受けなかった患者の割合を調べると、病院によって5%程度から、40%近くまで違いがあった。しかも「対症療法だけ」の割合が高くなるほど、生存率が低かった。

 このため研究班は「根治手術ができると判断する基準が病院によって違う。生存率の低い病院は、本来は根治手術などができるのに対症療法しかしていない場合が多い」と結論づけた。

 斉川医長は「これまでは各病院が、自分たちの治療方法を最善と信じてきた。今後は各病院が協力して治療方針を統一する努力が必要だ」と話している。【高木昭午、鯨岡秀紀】


http://webabst.niph.go.jp/pdf/2002/200205100001.pdf
http://webabst.niph.go.jp/pdf/2002/200205100002.pdf